包括遺贈・特定遺贈とは?|遺言書で法定相続人以外に相続させる

松村弁護士
代表弁護士 松村 武 (まつむら たけし)

遺言を活用すれば法定相続人以外にも遺産を渡すことができる

遺言が無い場合は、法律で定められた相続人(法定相続人)が、お亡くなりになった方の遺産を相続することになります。法定相続人とは、亡くなった方の妻や夫、子どもや孫などの親族を指します。

つまり、内縁の妻、お世話になった遠い親戚や友人に財産を引き継いでもらいたいと思っても、遺言がなければ、法定相続人でなければ、財産を譲り渡すことはできません。遠い親戚や友人などの血縁関係のない第三者に遺産を譲り渡したい場合には、遺言を作成する必要があります。

遺言を利用すると、知人や友人に限らず、企業やボランティア団体などの機関に遺産を譲り渡すこともできます。

その他にも、法律上の夫婦ではないパートナーや、養子縁組をしていない再婚相手の連れ子に財産を譲る場合には、遺言を作成することが必要です。

このように、遺言によって財産を譲り渡すことを、「遺贈(いぞう)」といいます。

今回は、遺贈の種類や注意点について、具体例を交えて分かりやすく解説します。

なお、下記はあくまで一般的なご説明です。相続人以外に財産を譲るケースとしては様々な方法がありますので、ご自身にとってどのような方法がふさわしいのかはケースバイケースに判断しなければいけません。

ご自身の状況に即して具体的なアドバイスをお聞きしたいという方は、当事務所までご相談ください。

当事務所には、弁護士経験20年以上の実績のある弁護士が在籍しており、これまでに数多くの遺贈の案件を取り扱った実績がございます。遺贈についてお悩みの方は、どうぞ安心してご相談ください。

遺贈のご相談については初回60分のみ無料で受け付けております。遺贈についてお悩みの方は、ご予算を気にすることなくお気軽にご相談ください。

包括遺贈と特定遺贈の違いとは

遺言を用いて相続人以外に財産を譲り渡すことを、「遺贈(いぞう)」といいます。

遺贈には、「包括遺贈(ほうかついぞう)」と「特定遺贈(とくていいぞう)」の2種類があります。 どのように違うのでしょうか?

「特定遺贈」とは渡す財産を指定する遺贈

特定遺贈とは、「特定の具体的な財産を遺言によって譲り渡すこと」です。

例えば、「内縁のパートナーとして長年連れ添ったAさんに、一緒に住んでいたマンションを譲り渡す」という場合や、「会社の後継者であるBさんに、会社の機材を引き継いでもらう」という場合です。

譲り渡す財産が特定されているため、包括遺贈に比べると、法定相続人との間で協議をする必要ないのでトラブルが生じる可能性は高くありません。

「包括遺贈」とは相続分の割合を指定する遺贈

包括遺贈とは、「遺産の全部または一部を一定の割合で示して行う遺贈」のことです。

分かりやすく言うと、「遺産の20%をCさんに譲る」というように、割合を指定して財産を譲り渡すことです。

包括遺贈では、「どの財産を譲り渡すのか」ということがあらかじめ決まっていません。よって、包括遺贈を受けた人は、遺産分割協議に参加して、相続人と一緒に話し合いを行わなければいけません。

上記の例では、Cさんと相続人全員が話し合って、どの財産を引き継ぐのかを決定します。Cさんが遺産分割協議に参加することは、権利でもあり義務でもあります。

このように、包括遺贈を受けた人物は、相続人に類似する立場となります。このため、法律上では、相続人と同一の権利義務を持つことが認められています(民法990条)。

包括遺贈と特定遺贈はどう使い分けたらいいのか

包括遺贈と特定遺贈は、どのように使い分けたらよいのでしょうか?

包括遺贈にするか特定遺贈にするかについてお悩みの方のために、4つのポイントを紹介します。

ポイント1:包括遺贈は当事者が柔軟に分割方法を決めることができる

包括遺贈の場合は、包括遺贈を受けた人物と相続人が一緒になって、「どのように遺産を分配するか」について話し合いを行います。

つまり、包括遺贈のメリットとして、「当事者が希望を言い合って、柔軟に遺産を分配できる」という点があります。

ただし、このメリットは、「当事者が円満に話し合いを行う」という点が前提となっています。当事者の折り合いが良くない場合は、話し合いがうまく進まず、かえってトラブルが生じるおそれがあります。

当事者同士に感情的な対立があり、話し合いが円満に進まないおそれがある場合は、包括遺贈ではなく、特定遺贈をお勧めいたします。

ポイント2:財産に変動があった場合は特定遺贈では対応できない

特定遺贈では、「マンションをAさんに譲る」というように、具体的な財産を指定しなければいけません。

しかし、遺言を書いた時点でマンションを所有していたとしても、その後に売却してしまうことがあります。もしくは、その後に価値が暴落して、マンションの価値がローンを下回ってしまうかもしれません。

また、遺言書を作成した後、遺贈する銀行口座から何らかの事情で預金を払い戻さざるを得なくなってしまうこともあります。

このように、特定遺贈のデメリットとして、「遺言を書いた後の財産の変化に対応できない」ということがあります。

遺贈する財産の価格が大幅に変動した場合

お亡くなりになった方が、XさんとYさんに平等に財産を渡そうと考えて、遺言に「駐車場をXさんに譲り、車をYさんに譲る」と書いた場合を考えてみましょう。

遺言を書いた時点では、駐車場と車の価値が同じであったとしても、その後に車が事故にあって、大幅に値段が下がってしまうかもしれません。もしくは、駐車場の価値が高騰して、Yさんにとって不平等な結果となってしまうかもしれません。

このように、特定遺贈の場合は、遺言を書いた後になっても安心することができません。財産の変動がないかどうかをチェックして、必要があれば遺言を書き換えなければいけません。

ポイント3:包括遺贈は借金まで引き継ぐおそれがある

包括遺贈は、「遺産の20パーセントを引き継ぐ」というように、割合を指定されて財産を引き継ぐ方法です。このため、包括遺贈を受けた人物は、遺産に借金が含まれている場合は、借金まで引き継ぐことになります。

例えば、亡くなった方が住宅ローンとして1,000万円の債務を抱えていた場合に、包括遺贈として20パーセントを承継したときには、遺贈として200万円分のローンを引き継ぐことになります。

包括遺贈を受ける場合には、すぐに遺贈を受け入れるのではなく、まずは「亡くなった方に債務があるか」という点を調査しなければいけません。

遺言の中に借金が記載されていなかったとしても、隠れた借金があるおそれがありますので、きちんと調べることが必要です。

借金を引き継ぎたくない場合は放棄することができる

遺産を調査した結果、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多いことが発覚した場合は、包括遺贈を放棄することができます。

ただし、包括遺贈を放棄するためには、家庭裁判所で手続きをしなければいけません。

包括遺贈を受けた人物は、相続人に類似する立場にありますので、包括遺贈を受けるかどうかによって、他の相続人に大きな影響を与えます。このため、遺贈を放棄するためには、家庭裁判所での手続きが必要とされています。

放棄する場合は3ヶ月以内に手続きをしなければいけない

放棄する際に注意すべき点は、「包括遺贈を知った日から3ヶ月以内に手続きをしなければいけない」ということです。

期限を過ぎてしまうと、包括遺贈を放棄することができなくなります。放棄する場合には、迅速に手続きを進めなければいけません。

このため、包括遺贈の放棄でお悩みの方は、お早めに専門家にご相談されることをお勧めいたします。

当事務所でも、包括遺贈の放棄に関するご依頼を受け付けております。当事務所は日頃から相続の案件に力を入れており、これまでに遺贈に関するトラブルを数多く取り扱った実績がございます。包括遺贈の放棄には3ヶ月という短い期限がありますので、お悩みの方はお早めにご相談ください。

ポイント4:特定遺贈はいつでも放棄することができる

特定遺贈は、具体的に指定された財産のみを引き継ぐため、遺贈を放棄するか受け入れるかどうかによって、関係者に与える影響はあまり大きくありません。

このため、特定遺贈はいつでも遺贈を放棄することができます。包括遺贈のように、3ヶ月という期限はありません。裁判所で手続きをする必要もありません。

特定遺贈の放棄は書面で行うと確実

遺贈を放棄する場合は、相続人に対して、口頭で伝えれば十分です。ただし、口頭で伝えた場合は、将来的に「言った」「言わない」の争いになるおそれがありますので、書面でお伝えすることをお勧めいたします。

書面で伝える場合は、内容証明郵便で行うことが最も確実な方法です。内容証明郵便を使うと、「いつ」「誰に対して」「どのような文面で放棄を伝えたのか」ということが、郵便局に記録として残ります。

このため、内容証明郵便によって遺贈の放棄を伝えた場合は、将来的に「言った」「言わない」というトラブルが生じるおそれがありません。

ただし、内容証明郵便の文面には、遺贈を放棄する旨を法的に正確に記載する必要があります。内容証明の文面でお悩みの方は、当事務所にご相談ください。

当事務所では、特定遺贈の放棄の手続きについてもサポートしております。これまでに遺贈に関するご相談を数多く受け付けた実績がございますので、特定遺贈の放棄についてお悩みの方は安心してご相談ください。

遺贈でも相続税は発生する

遺贈は相続とは異なりますが、亡くなった方の財産を引き継ぐという点では、相続と同じ性質を持ちます。このため、遺贈によって何らかの財産を取得した場合には、相続税がかかります。

遺贈を受け入れるかどうかは、相続税がいくらかかるのかを計算したうえで、慎重に決定しなければいけません。特に、遺贈によって土地やマンションなどの不動産を取得する場合には、慎重にシミュレーションをする必要があります。

遺贈による相続税の金額は、状況によって計算方法が異なります。具体的な算出方法を知りたい方は、当事務所までご相談ください。

相続税の負担が大きい場合には、遺贈を放棄することができます。ただし、包括遺贈の放棄は3ヶ月以内に行わなければいけません。包括遺贈についてお悩みの方は、お早めに当事務所までご相談ください。

遺贈でお悩みの方は当事務所までご相談ください

遺贈の制度を使うと、法律で定められた相続人以外に財産を譲り渡すことができます。

法律上の夫婦ではない内縁関係のパートナーや、養子縁組をしていない再婚相手の連れ子は、法律上の相続人にはなりませんが、遺贈の制度を使えば財産を譲り渡すことができます。

遺贈には、包括遺贈と特定遺贈の2種類があります。それぞれのメリットとデメリットを理解したうえで、どちらがご自身の状況にふさわしいのかを見極めなければいけません。

特に、包括遺贈は法定相続人との間で、遺産分割協議をしなければならないことから、当事者同士に感情的な対立がある場合は深刻な紛争に発展する可能性がありますので、遺言を作成する前に、慎重に検討することが必要です。
包括遺贈か特定遺贈かを決定するには、専門的な視点が必要となります。お悩みの方は、当事務所までご相談ください。

当事務所は日頃から相続の案件に力を入れており、これまでに遺贈に関するお悩みを数多く取り扱った実績がございます。遺贈についてお悩みの方は、どうぞ安心して当事務所にご相談ください。

また、当事務所では、遺贈を受けた方からのご相談も承っております。遺贈をうけるかどうかについてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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