法定相続人が誰もいない場合は特別縁故者が相続できる

松村弁護士
代表弁護士 松村 武 (まつむら たけし)

お亡くなりになった方にご家族がいない場合、誰が遺産を引き継ぐのでしょうか?

生涯未婚率が上昇するにしたがって、孤独死される方も増えています。「お亡くなりになった方に、妻や子どもなどの法定相続人がいない」ということは、決して珍しいことではありません。

また、結婚のスタイルが多様化することによって、事実婚や内縁関係を選択する方も増えています。婚姻届を出していないご夫婦の場合、パートナーの方が亡くなったとしても、法定相続人となることはありません。このような理由によって、法定相続人がいないというケースも増えています。

法定相続人が1人もいない場合は、原則として、お亡くなりになった方の遺産は全て国のものとなります(民法959条)。

ただし、法定相続人が1人もいない場合であっても、家族同然の付き合いをしていた親しい人物がいるのであれば、その人物に財産を引き継がせた方が、お亡くなりになった方の意向に沿うことがあります。

このような理由で始まった制度が、「特別縁故者(とくべつえんこしゃ)に対する相続財産分与の制度」です。

今回の記事では、「どのような人物が特別縁故者となることができるのか」という法律のルールを具体例を交えて紹介し、特別縁故者になるための手続きの流れも解説します。

なお、下記はあくまで一般的なご説明です。特別縁故者は特殊な制度であるため、一律に線引きすることが難しい問題です。特別縁故者に該当するかどうかは、具体的な状況に応じてケースバイケースに判断することが必要です。

ご自身の状況に即して具体的なアドバイスをお聞きしたいという方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

当事務所には、弁護士経験20年以上の実績のある弁護士が在籍しており、これまでにも特別縁故者に関するご相談を数多く受け付けてきた実績がございます。特別縁故者についてお悩みの方は、どうぞ安心してご相談ください。

特別縁故者になれる人物は民法で決められている

特別縁故者とは、「お亡くなりになった方と生前親しく付き合っており、深い縁故(えんこ)を持っている人物」のことです。

民法には、特別縁故者となれる人物について、はっきりとした基準が定められています。誰でも特別縁故者になれるわけではありません。

それでは、どのような人物が特別縁故者となることができるのでしょうか?

民法で認められている特別縁故者は、下記の3種類です。

その1:亡くなった方と生計を同じくしていた者

亡くなった方と生計を共にしていた場合は、特別縁故者に該当する可能性があります。

例えば、30年にわたって内縁関係を続けている事実婚のご夫婦や、20年以上一緒に住んでいる遠縁の子供は、特別縁故者に当たる可能性があります。

再婚相手の連れ子と一緒に暮らしている場合も、特別縁故者に該当する可能性があります。一緒に住んでいない場合であっても、亡くなった方が学費や生活費を負担していた場合は、「生計を同じくしていた者」に当たる可能性があります。

なお、再婚相手の連れ子と養子縁組をしてる場合は、法律上の親子関係が認められますので、その子どもは法定相続人となります。法律によって自動的に相続人となりますので、特別縁故者に該当するかどうかを検討する必要はありません。

その2:亡くなった方の療養看護に努めた者

亡くなった方の身の回りの世話をした人物や、看護や介護に努めた人物は、特別縁故者に該当する可能性があります。

ただし、報酬を受け取って療養看護をしていたプロの看護師や介護士は、仕事の一環として療養看護をしていたにすぎませんので、特別縁故者には該当しません。

特別縁故者に該当するのは、あくまで個人的なつながりを理由として、献身的に介護や看護を尽くした人物に限られます。

その3:亡くなった方と特別の縁故があった者

亡くなった方と家族同然の付き合いをしていた人物や、特別に深く関わっていた人物は、特別縁故者に該当します。

この3種類目の類型には、公益法人や学校法人、地方公共団体などの組織も含まれます。

例えば、お亡くなりになった方が、近所の小学校のPTAとして長年働いており、学校の発展や存続に尽力したという事実があれば、その学校そのものが特別縁故者に該当する可能性があります。

特別縁故者になるには裁判所への申し立てが必要

特別縁故者に認められると、亡くなった方の財産を引き継ぐという重大な結果が伴います。このため、特別縁故者に認められるためには、裁判所による厳格な審査を通過しなければいけません。

それでは、特別縁故者になるための手続きは、どのように行われるのでしょうか?

手順1:相続財産管理人の選任

特別縁故者に認められるためには、まず前提として、「法定相続人がいない」ということが必要です。

そこで、まず第一に、「相続人がいない」ということを裁判所に確定してもらわなければいけません。

相続人がいないかどうかの調査を行う人のことを、「相続財産管理人」と呼びます。相続財産管理人は、家庭裁判所によって選任されます。

「相続財産管理人」は、その名のとおり、相続財産を適正に管理する人物です。遺産が散らばってしまわないように監督し、法律上の相続人がいないかどうかを調査したうえで、適正な人物に遺産を配分する、という役割を担っています。

手順2:相続人の調査

相続財産管理人は、亡くなった方の戸籍の記録をたどって、親戚関係を追跡します。

この調査によって、亡くなった方の隠し子や兄弟姉妹が見つかった場合は、その方が法定相続人となりますので、特別縁故者の申し立てをすることはできなくなります。

手順3:特別縁故者の申立て

相続財産管理人の調査によって、法定相続人が見つからなかった場合は、特別縁故者の申立てを行うことができます。

なお、特別縁故者の申立てには期限があるので、注意しましょう。申立ての期限は、「相続財産管理人が『相続人がいない』ということを確定してから3ヶ月以内」です。

手順4:裁判所による認定

裁判所は、提出された資料を元に、その人物が特別縁故者にふさわしいかどうかを審査します。裁判所の審査を無事に通過すると、裁判所から特別縁故者として認定されます。

特別縁故者に関する2つの注意点

特別縁故者は、相続人ではないにも関わらず、亡くなった方の遺産を引き継ぐことができるという便利な制度です。一方で、特別縁故者の制度にはデメリットもあるので、注意が必要です。

特別縁故者の申立てをする前に、下記の2つのデメリットを確認しておきましょう。

注意点1:特別縁故者にも相続税はかかる

特別縁故者について注意するべき点は、「特別縁故者にも相続税がかかる」ということです。

特別縁故者は、相続人ではありません。しかし、亡くなった方の遺産を取得するという点では、相続人と同様の利益を得ることになります。このため、特別縁故者にも相続税がかかります。

どれくらいの相続税がかかるかは、取得する財産の種類や価値によって異なります。

多額の相続税に悩まされないためにも、特別縁故者の申立てをする前に、ご自身の相続税について具体的にシミュレーションをしておくことが重要です。

注意点2:確実に財産を引き継がせるためには遺言を作成した方が良い

特別縁故者は、誰でもなれるわけではありません。特別縁故者に該当するかどうかは、民法に厳格な基準が定められています。

このため、たとえお亡くなりになった方が、「内縁の妻は、特別縁故者として財産を引き継ぐことができるから、遺言を準備する必要はないだろう」と考えていたとしても、家庭裁判所の判断によって、内縁の妻が特別縁故者に認められない可能性があります。

家庭裁判所の裁判官は、「裁判所に提出された証拠」に基づいて、特別縁故者にふさわしい人物かどうかを判断します。

つまり、実際には亡くなった方と家族同然の付き合いをしていたとしても、それを示す「証拠」がなければ、特別縁故者には認められません。たとえ亡くなった方が、「特別縁故者にふさわしい人物だ」と考えていても、そのことを示す証拠が残っていなければ、特別縁故者には認められません。

よって、内縁の妻や連れ子に確実に財産を引き継がせたい場合には、特別縁故者の制度をあてにすることはできません。裁判所から特別縁故者と認められないリスクがあるからです。

確実に財産を引き継がせるためには、あらかじめ遺言を作成しておくという方法が有効です。遺言にはいくつかの種類がありますが、確実性を重視するのであれば、「公正証書遺言」をお勧めいたします。

公正証書遺言については、「遺言書にはどんな種類があるのか?」でご説明しておりますので、詳しくはそちらをご覧ください。

特別縁故者についてお悩みの方は当事務所までご相談ください

特別縁故者の制度は、法定相続人がいない場合に、生前に親しくしていた人物に財産を引き継がせるという制度です。

特別縁故者は大変便利な制度ですが、特別縁故者と認められるためには、裁判所での複雑な手続きが必要となります。特別縁故者の申立てをするだけでなく、相続財産管理人の選任の申立ても必要となります。申立ての期限は3ヶ月しかありませんので、期間を過ぎないように注意しなければいけません。

このように、特別縁故者として認められるためには、専門性の高い手続きが必要となります。法律に精通していない方にとっては、手続きに時間がかかってしまい、大きなストレスとなるかもしれません。精神的負担を少しでも軽減するためにも、専門家にご依頼されることをお勧めいたします。

当事務所では、日頃から相続の案件に力を入れており、これまでに特別縁故者に関する案件を数多く取り扱った実績がございます。特別縁故者についてお悩みの方は、どうぞ安心して当事務所にご相談ください。

当事務所にご依頼された場合には、相続財産管理人の選任から特別縁故者の申立てまで、最初から最後まで弁護士がサポートいたします。お悩みの方は、まずは一度ご相談ください。

特別縁故者に関するお悩みについては、初回60分のみ無料でご相談を受け付けておりますので、ご予算を気にすることなくお気軽にお問い合わせください。

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