相続放棄は取り消すことができるのか

松村弁護士
代表弁護士 松村 武 (まつむら たけし)

相続放棄は取り消すことができるのか?|相続放棄は弁護士に相談

相続放棄をした後になって、「やっぱり相続放棄をするのではなかった」と後悔した場合、相続放棄を取り消すことはできるのでしょうか?

相続放棄は、多くの人に影響を与える手続きなので、原則として取り消すことはできません。ただし、ごく例外的な場合に限っては、相続放棄を取り消すことが認められています。

今回は、相続放棄を取り消すことができる場合を具体例を交えて紹介し、取り消す場合の注意点についても解説します。

なお、下記はあくまで一般的な説明です。相続放棄を取り消すことができるかどうかは、一律に線引きができる問題ではありませんので、状況に応じてケースバイケースに判断をすることが必要です。

ご自身のケースに即して具体的なアドバイスをお聞きしたいという方は、当事務所までご相談ください。相続放棄の取消しに関するご相談は、初回60分のみ無料で受け付けております。

相続放棄の取消しには期間制限がありますので、お悩みの方はできる限りお早めにご相談ください。

相続放棄を取り消すことができる場合とは

裁判所で相続放棄が受理されると、原則として取り消すことはできません。ただし、ごく例外的なケースに限っては、取り消すことが認められています。

それでは、具体的にどのような場合に取り消すことができるのでしょうか?

強迫されて相続放棄を行った場合

第三者に強迫されてやむをえず相続放棄を行った場合は、取り消すことができます。

例えば、兄弟から恫喝(どうかつ)されて、「相続放棄をしなければ、今後は兄弟の縁を切る」「相続放棄をしなければ、父親のお墓の場所を教えない」などと脅(おど)された場合は、取り消すことができます。

単に、「相続放棄をした方がよい」と兄弟からアドバイスされただけでは、強迫とまではいえませんので、取り消すことはできません。

ここでのポイントは、「本人の自由意思によるものかどうか」という点です。恐怖心によって正常な判断をすることができず、やむなく相続放棄を行った場合に限って、取り消すことができます。

詐欺によって相続放棄を行った場合

第三者の詐欺(さぎ)によって相続放棄を行った場合は、取り消すことができます。

例えば、親戚の叔父さんから、「相続税の手続きに必要な書類なので、ここに印鑑を押してほしい」と言われて、言われるままに押印したところ、実はその書類が相続放棄の申述書であったという場合は、取り消すことができます。

「速やかに証拠を確保すること」が重要

詐欺によって相続放棄を取り消す場合は、「詐欺を立証するための証拠」が必要となります。

詐欺を行った本人としては、自らの悪事がばれないように、急いで証拠を隠滅(いんめつ)する可能性が高いと考えられます。このため、詐欺を理由として相続放棄を取り消そうとしても、十分な証拠が見つからず、相続放棄を取り消すことを諦(あきら)めてしまう方は珍しくありません。

詐欺によって相続放棄を取り消すためには、「速やかに証拠を確保すること」が重要なポイントとなります。迅速に対処する必要がありますので、詐欺による相続放棄の取消しをご検討されている方は、お早めに当事務所までご相談ください。

錯誤によって相続放棄を行った場合

相続放棄の意思表示に錯誤(さくご)があった場合には、取り消すことができます。

錯誤とは、「深刻な勘違い(かんちがい)」という意味です。単に「うっかり間違えた」というだけでなく、「十分な調査を行ったにも関わらず、重大な事柄について誤解してしまった」ということが必要です。

具体的に、どのような「勘違い(かんちがい)」があれば、取り消しをすることができるのでしょうか?

過去の裁判例では、税理士や会社関係者から「亡くなった方には多額の借金があった」という説明を受けたために、多額の借金があると誤解して、借金から免れるために相続放棄を行ったケースについて、錯誤無効の主張を認めています。

ただし、上記はあくまで一つの具体例です。錯誤無効の主張が認められるためには、法律で様々な条件が認められています。錯誤無効によって相続放棄を取り消すことができるかどうかは、専門家でも判断が難しい問題です。

どのような場合に錯誤無効の主張が認められるかは、ケースバイケースに判断をすることが必要です。錯誤無効の主張をご検討されている方は、専門家である弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

相続放棄の手続きに重大な瑕疵がある場合

相続放棄の手続きに重大な瑕疵(かし)がある場合は、取り消すことができます。

例えば、相続放棄をする本人がまだ未成年である場合は、1人で手続きを行うことはできません。同じ相続人である父親や母親などの法定代理人が、未成年者の代理となって相続放棄の申述を行います。

もしも相続人である父親が相続放棄をせずに、未成年者だけが単独で相続放棄を行い、受理されてしまった場合は、手続きに重大な瑕疵(かし)がある場合に当たりますので、取り消すことができます。

相続放棄の取り消しは6ヶ月以内に行わなければいけない

相続放棄の取消しについて最も注意しなければいけないことは、「期間制限がある」という点です。

相続放棄を取り消すと、他の相続人や債権者など、多くの人に影響を与えます。このため、取り消しをすることができる期間は、法律で「6ヶ月以内」に限定されています。

相続放棄の取消しは、家庭裁判所で行います。6ヶ月以内に必要な書類や証拠をそろえて、裁判所に提出しなければいけません。相続放棄の取消しには、様々な書類が必要となりますので、6ヶ月の間に急いで準備をしなければいけません。

「6ヶ月」は「追認できる時点」から起算する

取消期限の6ヶ月は、いつから起算するのでしょうか?

6ヶ月という期間は、「追認できる時」から起算します。例えば、詐欺を理由として取り消す場合は、「詐欺であることに気がついた日から6ヶ月」です。

相続放棄を取り消す手続きでは、たくさんの書類が必要となります。このため、6ヶ月の間に迅速に手続きを進めなければいけません。自分で手続きをしようとすると、資料をそろえるのに時間がかかってしまい、期限を過ぎてしまうおそれがあります。

相続放棄の取消しをご検討されている方は、お早めに弁護士にご相談ください。

「取消し」ではなく「取下げ」という方法もある

以上で紹介したケースは、いずれも「相続放棄の取消し」です。「取消し」とは異なる方法として、「取下げ」という手段もあります。

「相続放棄の取下げ」とは、一体どのような方法なのでしょうか?

「相続放棄の取下げ」とは

相続放棄の手続きは、家庭裁判所で行います。戸籍などの必要書類を家庭裁判所に提出して、裁判所が書類がそろっていることを確認すると、相続放棄が受理されます。

裁判所が相続放棄を受理するまでに、およそ1週間ほどかかります。この1週間以内であれば、まだ相続放棄の手続き自体が始まっていませんので、取り下げることができます。

相続放棄を取り下げると、「最初から相続放棄の申述自体が無かったもの」と扱われます。つまり、「元々相続放棄をしていない」という状態に戻ります。

取り下げをすることができる期間は数日のみ

相続放棄を取り下げることができる期間は、「裁判所が受理するまで」です。通常は1週間ほどかかりますが、空いている時期であれば、2〜3日ほどで受理されることがあります。

このため、取下げの期間は、わずか数日しかありません。受理される前に申述自体を取り下げるためには、数日以内に迅速に対応しなければいけません。

相続放棄は原則取り消しできないので入念に調査を行うことが大切

相続放棄は、多くの人に影響を与える手続きなので、原則として取り消すことはできません。

ごく例外的に取り消しをすることが認められていますが、第三者から強迫された場合や詐欺の被害に遭(あ)った場合など、特殊なケースに限られています。

一度相続放棄をすると、その後に取り消すことは難しいため、相続放棄を行う前に、入念に調査をしておくことが大切です。お一人で悩んでいると、見落としてしまう点があるかもしれません。

このため、今から相続放棄を行うことをご検討されている方は、相続放棄の手続きを行う前に、一度専門家にご相談されることをお勧めいたします。

「既に相続放棄を行ったものの、今から相続放棄を取り消したい」と考えていらっしゃる方は、お早めに弁護士にご相談ください。相続放棄を取り消すためには、取消しをする理由や状況などについて、詳細に裁判所に報告をしなければいけません。専門的なノウハウが必要となりますので、相続放棄に精通した弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

当事務所は、日頃から相続の案件に力を入れており、これまでに相続放棄に関する案件を数多く取り扱った実績がございます。相続放棄についてお悩みの方は、どうぞ安心してご相談ください。

相続放棄を取消すことができるかどうかは、一律に線引きができる問題ではありません。状況に応じて柔軟に判断することが必要となりますので、ケースバイケースに専門的に分析することが必要となります。

相続放棄を取り消すことができる期間は、わずか6ヶ月しかありません。迅速に対処する必要がありますので、お悩みの方はお早めにご相談ください。

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