遺産分割協議のやり方について

松村弁護士
代表弁護士 松村 武 (まつむら たけし)

遺産分割協議はどのように行えばよいか

身近な方がお亡くなりになった場合、親族間で遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)を行います。遺産分割協議とは、相続人の間で話し合いを行い、「誰がどの財産を相続するか」を決めることです。

遺産分割協議は、単なる「話し合い」ではありません。日本の法律には、遺産分割協議の進め方がきちんと定められています。法律に従って適切に行わなければ、せっかくの話し合いが無駄になってしまいます。

今回は、遺産分割協議の方法について、分かりやすく説明します。

なお、下記はあくまで一般的なルールです。遺産分割協議をどのように行うべきかは、状況に応じて柔軟に対応しなければいけません。ご自身のケースに即して具体的なアドバイスを聞きたいという方は、当事務所までご相談ください。

遺産分割協議は必ず行わなければいけないのか

遺産分割協議は、法律で義務付けられているわけではありません。ただし、多くの場合では、遺産分割協議が必要となります。

遺産分割協議が必要となるケース

それでは、どのような場合に遺産分割協議が必要となるのでしょうか。

遺言が無い場合

お亡くなりになった方が遺言を残していない場合、遺産分割協議が必要となります。

遺言が無い場合は、法律上のルールを参考にして遺産を配分することになりますが、法律には「おおよその目安」しか定められていません。

例えば、相続人として子どもが3人いる場合は、法律上のルールとして「財産は平等に3頭分する」と定められています。もし相続財産として現金が300万円残されている場合は、3人で100万円ずつ分けることになります。

しかし実際には、このように単純ではありません。例えば、遺産として実家が残っている場合は、実家を取り壊すのかそのまま売却するのか、3人で話し合わなければいけません。実家を取り壊すとしても、その費用は誰が払うのか、売却するとしたら売れるまでの間の税金は誰が払うのかなど、細かい内容を話し合いで決めなければいけません。

そこで、相続人全員が集まって、遺産分割協議をすることが必要となります。

遺言があるものの分割方法がはっきりとした記載されていない場合

遺言が残されているものの、遺産の配分の方法が具体的に記載されていない場合は、遺産分割協議が必要となります。実務ではよくあるケースです。

例えば、遺言に「兄弟2人で仲良く均等に分配しなさい」と書かれていても、具体的にどのように分割するかは不明です。

もし遺産の中に借金が含まれている場合は、兄弟のどちらが返済するのかを話し合わなければいけません。どちらかが生前の治療費を支払っていた場合は、その金額を精算しなければいけません。

このように、遺言が残されていたとしても、多くの場合では遺産分割協議が必要となります。

遺言に書かれていない財産がある場合

遺言が残されていても、相続の手続きを進めているうちに、遺言書に記載されていない財産が発覚することがあります。こちらも実務ではよくあるケースです。

お亡くなりになった方が複数の銀行に口座を持っている場合は、遺言に書き忘れたのかもしれません。もしくは、「この財産はたいした価値が無いから、わざわざ遺言に書かなくてもよいだろう」と考えたのかもしれません。

いずれにしろ、遺言に記載されていない財産は、相続人の1人が勝手に処分することはできません。どのように分割するかについて、きちんと遺産分割協議を行わなければいけません。

遺言とは違う方法で財産を分割したい場合

遺言が残されていても、全ての相続人が合意していれば、遺言とは異なる方法で遺産を分割することができます。ただし、このような場合は遺産分割協議を作成しなければいけません。

例えば、遺言に「家業は長男に引き継いでもらい、実家は長女に住んでもらう」と記載されていたとしても、長男が家業を引き継ぐ意志がないかもしれません。また、長女は実家に住みたいとは思っておらず、実家を取り壊して売却したいと考えているかもしれません。

このように、遺言とは異なる方法で財産を分割する場合は、遺産分割協議が必要となります。

遺産分割協議が必要でないケース

以上の通り、多くの場合では遺産分割協議が必要となります。遺産分割協議が必要でないケースは、めったにありません。代表的なケースは、相続人が1人しかいない場合です。

相続人が1人しかいない場合は、その人が1人で全ての財産を相続することになるので、遺産分割協議を行う必要はありません。

遺産分割協議の前に済ませておくこと

それでは、遺産分割協議はどのように行えばよいのでしょうか?

まず、遺産分割協議を行う前に、準備しなければいけないことがあります。準備の段階でたくさんの手続きが必要となるため、うんざりしてしまうかもしれませんが、これらの準備を事前に済ませておけば、遺産分割協議はスムーズに進みます。

反対に、これらの準備を怠ってしまうと、話し合いが順調に進まず、遺産分割協議が長引いてしまうおそれがあります。

遺産分割協議をスムーズに行うために、まず下記の準備をしておきましょう。

遺言書が残されているかどうか確認する

遺言があるかどうかによって、遺産分割協議で話し合う内容が大きく変わります。まずは、遺言が残されているかどうかを調べておきましょう。

誰が相続人であるかを確定する

遺産分割協議は、「相続人全員」で行わなければいけません。全ての相続人が話し合いに参加したうえで、相続人全員の合意によって協議を取りまとめなければいけません。

1人でも相続人が欠けていた場合は、その遺産分割協議は無効となります。初めから手続きをやり直さなければいけません。

全ての相続人をきちんと確認するためには、亡くなった方の全ての戸籍を確認することが必要です。「全ての戸籍」とは、亡くなった方の出生時から死亡時までの連続した全ての戸籍です。

どのような財産が残されているかを調査する

遺産分割協議では、「誰がどの財産を引き継ぐのか」について話し合います。このとき、「そもそもどのような財産が残されているのか」が分からなければ、話し合いは進みません。

遺言がある場合は、遺言書の中に相続財産のリストが記載されています。遺言がない場合は、お亡くなりになった方の住居や勤務先を調査して、どのような相続財産が残されているかを探し出さなければいけません。

土地や株式などの相続財産が残されている場合は、おおよその評価額を調べておくと、遺産分割協議がスムーズに進みます。

遺産分割協議の流れ

以上の準備を済ませると、いよいよ遺産分割協議のスタートです。

まずは相続人全員で集まる日を決める

遺産分割協議をまとめるために、必ず「相続人全員の合意」が必要です。相続人全員が集まることができる日取りを決めましょう。

仕事や育児が忙しいためどうしても参加できないという場合は、弁護士を代理人としてすることができます。通常は、遺産分割協議は一度で終了することはありません。何度か話し合いを重ねるうちに、次第に協議がまとまっていきます。全ての話し合いに参加することが難しいとお考えの方は、あらかじめ弁護士に依頼しておくと安心です。

当事務所でも、遺産分割協議の代理人業務を受け付けております。遺産分割協議に参加することが難しい方は、当事務所までご相談ください。

遺言がある場合は遺言に沿って話し合いを進める

遺言がある場合は、まずは遺言の内容に沿って話し合いを進めましょう。

遺言が無い場合は、「法定相続分(ほうていそうぞくぶん)」を参考にして話し合いを進めましょう。法定相続分とは、「法律で定められた相続割合」のことです。

法定相続分については、「遺産分割の目安となる「法定相続分」とは?」で詳しく解説しています。詳しく知りたい方はそちらを参考にしてください。

必ず遺産分割協議書を作りましょう

相続人全員の合意によって話し合いがまとまったら、必ず「遺産分割協議書(いさんぶんかつきょうぎしょ)」を作成しましょう。遺産分割協議書とは、話し合いの内容を記録する書類です。

遺産分割協議書を作成すると、下記のようなメリットがあります。

  • ・遺産分割が終了したことを第三者に証明することができる
  • ・遺産の名義変更をすることができる
  • ・預貯金の凍結(とうけつ)を解除して、現金を引き出すことができる
  • ・相続税を支払う際の申告書類となる
  • ・きちんとした記録を残すことで、後のトラブルを防止することができる

「話し合いはまとまっているが、どのような遺産分割協議書を作成すればよいのか分からない」という方は、当事務所までご相談ください。

当事務所では、日頃から相続の案件に力を入れておりますので、これまでに遺産分割協議書の作成を多数承った実績があります。

話し合いがまとまらない場合は調停や審判で解決する

相続人の間でどうしても話し合いがまとまらない場合は、裁判所で話し合うことになります。

裁判所での話し合いは、2段階に分かれます。まずは、家庭裁判所で遺産分割調停(いさんぶんかつちょうてい)を行います。調停でもまとまらない場合は、遺産分割審判(いさんぶんかつしんぱん)を行います。

遺産分割調停や遺産分割審判は、裁判所での手続きとなります。法律的に専門性の高い分野となりますので、お悩みの方は当事務所までご相談ください。当事務所では、遺産分割調停や遺産分割審判の代理業務も受け付けております。

遺産分割のお悩みは弁護士にご相談を

遺産分割協議は、親族間で行うものであるため、遺産分割協議のトラブルがきっかけとなって、その後の親族関係が険悪になってしまうことがあります。

親族間のみで話し合いを進めると、言いたいことを思うように言えなかったり、つい感情的になって口論になってしまうこともあります。

このようなトラブルを避けるためにも、遺産分割協議でお悩みの方は、法律の専門家である弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

当事務所では、日頃から相続の案件に力を入れており、弁護士業務20年以上の実績のある弁護士が在籍しております。相続のご相談について初回60分は無料で受け付けておりますので、お悩みの方はいつでもお気軽にご相談ください。

親族間トラブルから生前のご相談まで相続問題全般に幅広く対応します

0120-543-136 受付時間/平日9:00-19:00 ※土日祝対応可能
無料相談申込フォーム
順風法律事務所に無料相談する/0120-543-136 平日9:30-19:00 ※土日祝対応可能/メール予約フォーム