寄与分とは?|具体例と計算方法について

松村弁護士
代表弁護士 松村 武 (まつむら たけし)

寄与分とは?|具体例と計算方法について

相続財産は、法定相続分に従って分割することが原則です。しかし、相続人の1人が相続財産の増加に貢献している場合は、法定相続分のとおりに分割すると不公平な結果となることがあります。

例えば、長男が無償で親の事業を手伝っている場合は、長男の力によって、親の財産が増加しています。そこで、このような場合は、長男が「相続財産の一部は自分の特別な貢献によるものである」と主張をすることができます。

この制度を、「寄与分(きよぶん)」といいます。

それでは、一体どのような場合に寄与分を主張することができるのでしょうか?寄与分がある場合には、どのように遺産分割を進めたらよいのでしょうか?

今回は、「寄与分に該当するのはどのような場合か」という具体例と、「寄与分がある場合はどのように遺産分割を行ったらよいのか」という計算方法について、分かりやすく解説します。

なお、下記はあくまで一般的なケースを想定したご説明です。ご自身の状況に応じて具体的な計算方法を知りたいという方は、当事務所までご連絡ください。

当事務所では、寄与分についてのご相談を初回60分のみ無料で受け付けております。お悩みの方は、ご予算を気にすることなくお気軽にお問い合わせください。

財産の維持や増加に貢献した人は寄与分を主張できる

寄与分とは、「相続人の1人の貢献によって、亡くなった方の財産が増加した場合や、財産が維持された場合に、その貢献分を考慮して遺産分割を行う」という制度です。

具体的に、どのような場合に寄与分を主張することができるのでしょうか?

親の事業を手伝った場合

親の会社を無償で手伝った場合や、実家の家業をボランティアで手伝っていた場合は、その「労務そのもの」が寄与分に当たります。

会社や店舗に限らず、農業や漁業、林業などの全ての事業が対象となります。

ここでのポイントは、「無償で手伝っていた」「特別な貢献がある」という点です。社員として十分な給与を受け取っていた場合は、既に相当の対価を得ていますので、寄与分には該当しません。

ただし、給与を受け取っていた場合であっても、おこづかい程度のわずかな給与であれば、寄与分に該当する可能性があります。この点は一律に線引きをすることができないため、判断が難しい問題です。ご自身のケースに即して具体的なアドバイスが聞きたいという方は、当事務所までご相談ください。

医療費を支払った場合

亡くなった方の医療費を支払った場合は、寄与分に該当します。

老人ホームに入居する際の入居費用を支払った場合や、介護費用やデイケアの費用を支払った場合も、寄与分に含まれます。

ただし、お見舞いの品を渡した場合や、生活費用を差し入れた場合など、家族として常識的なお世話をしただけであれば、寄与分には該当しません。

長期間の介護や看護を行った場合

長期間にわたって介護や療養看護を行った場合は、そのことによって介護費用や看護費用を節約することができたと考えられるため、寄与分を主張することができます。

ただし、寄与分を主張するためには、「介護や看護をしていたことの具体的な証拠」が必要となります。

例えば、自宅介護を行っていた場合には、「介護の時間」や「介護の内容」が分かるものを証拠としてそろえなければいけません。

介護や看護についての証拠が残っていないことが多く、寄与分の主張が認められにくいという傾向があります。

証拠をそろえないままに寄与分を主張すると、他の相続人から寄与分を否定されてしまい、話し合いが長引くおそれがあります。

このようなトラブルを避けるためには、日頃から介護や看護に関する記録をきちんと残しておくことが重要です。他にも、親が遺言を作成する際に介護について記載してもらうという方法があります。

どのような対策を取るべきかは、具体的な状況によって異なります。ご自身のケースに応じたアドバイスを聞きたいという方は、当事務所までご相談ください。

寄与分がある場合の計算方法

相続人の1人に寄与分が認められる場合、どのように遺産分割を行うのでしょうか?

具体的なケースで考えてみましょう。

ある男性が、相続財産4,000万円を残して亡くなりました。相続人として、長男と次男がいます。長男は、父親が生きている際に、父親の医療費として1,000万円を支払いました。

  • 【実際の相続財産】4,000万円
  • 【長男が支払った医療費】1,000万円

本来であれば、この医療費1,000万円は、父親の貯金からが支払うべきものです。もし父親が自分で医療費を支払っていれば、相続財産は1,000万円ほど少なかったはずです。

そこで、長男は「自分が医療費を支払わなければ、相続財産は1,000万円少なかったのだから、相続財産は3,000万円として考えるべきだ」と主張することができます。

このように、寄与分を差し引いて相続財産を計算することを、「みなし相続財産」といいます。この例では、みなし相続財産は、3,000万円となります。

  • 【実際の相続財産】4,000万円
  • 【みなし相続財産】4,000万円(実際の相続財産)-1,000万円(医療費)=3,000万円

よって、長男と次男は、みなし相続財産の3,000万円を、法定相続分に従って分割します。2人の法定相続分は、どちらも2分の1です。

  • 【長男の法定相続分】3,000万円×2分の1(法定相続分)=1,500万円
  • 【次男の法定相続分】3,000万円×2分の1(法定相続分)=1,500万円

法定相続分の合計は、3,000万円となります。実際の相続財産は、4,000万円ありますので、1,000万円余ります。

この1,000万円は、長男が以前に支払った医療費の金額ですので、長男が受け取ります。

  • 【長男が実際に受け取る財産の総額】1,500万円+1,000万円(医療費)=2,500万円
  • 【次男が実際に受け取る財産の総額】1,500万円

以上の計算により、長男は合計2,500万円、次男は1,500万円を取得することになります。

寄与分は遺産分割のトラブルとなりやすい

相続人の1人に寄与分が認められると、他の相続人の遺産の取り分は減ってしまいます。このため、寄与分の存在そのものが争いとなるケースは少なくありません。

上記の例でも、次男の取り分は、寄与分によって500万円も少なくなっています。このようなケースでは、次男が寄与分の存在そのものを争う可能性が高くなります。具体的には、「本当に1,000万円も支払ったのか」「領収書を全部提出しないと寄与分を認めない」などと主張することが予想されます。

このように、寄与分の存在そのものについて争いが生じてしまうと、話し合いが平行線となり、トラブルが長期化する傾向があります。

また、相続人の1人が寄与分を主張すると、他の相続人も「自分にも寄与分がある」と次々と主張し始めることがあります。寄与分の主張をする人が増えると、それだけ話し合いも長引いてしまいます。

このようなトラブルを避けるためにも、寄与分を主張する際には、あらかじめ「具体的な証拠」をそろえることが重要です。詳細な証拠があれば、相手が寄与分を否定することが難しくなり、争いが生じる可能性が低くなります。

どのような証拠をそろえるべきかは、状況に応じて臨機応変に判断しなければいけません。お悩みの方は、相続問題に精通した弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

当事務所では、日頃から相続問題の解決に力を入れており、これまでに寄与分に関するトラブルを多数取り扱った実績があります。寄与分についてお悩みの方は、いつでもお気軽にご相談ください。

相続の手続きには、期限が定められているものもございます。寄与分についてお悩みがある場合は、なるべくお早めに当事務所までご相談ください。

なお、当事務所では、相続が発生する前のご相談も受け付けております。「自分が亡くなった後に、子ども同士が寄与分について争うかもしれない」というご相談や、「妻と子どもが寄与分についてトラブルとならないように、遺言を残しておきたい」というご相談も受け付けております。

当事務所には、弁護士経験20年以上の実績のある弁護士が在籍しております。寄与分についてお悩みの方は、どうぞ安心してご相談ください。

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