遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)された場合の対応はどうするか?
遺留分侵害額請求をされた場合は慎重な対応が必要
ある日突然、内容証明郵便が届き、遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)をされることがあります。急にこのような法的な書類が届くと、驚いてしまうかもしれません。しかし、慌てる必要はありません。
遺留分侵害額請求をされた場合、慌てることなく慎重に対応することが必要です。
遺留分とは、それぞれの相続人に対して最低限の遺産を保障する制度です。法律では、遺留分という制度によって、相続人の遺産に対する期待を一定程度保護しています。つまり、遺留分は、相続人に認められた正当な権利です。
よって、遺留分侵害額請求をした人が、法律上の適正な遺産を渡すように請求しているのであれば、正当な権利行使といえますので、遺産を渡さなければいけません。もちろん、分不相応な過大請求をしているのであれば、応じる必要はありません。
遺留分を請求された側としては、請求者が「適切な請求をしているのかどうか」を慎重に検討したうえで、「遺産を渡す必要があるのかどうか」「渡すとしたら具体的にいくら渡す必要があるのか」を見極めなければいけません。
今回の記事では、遺留分侵害額請求をされた人に向けて、遺留分侵害額請求をされた場合の対応方法と注意点について分かりやすく解説します。
なお、下記はあくまで一般的なご説明です。遺留分侵害額請求と一言でいっても、遺留分侵害額請求する側とされる側が親族関係にある場合や、遺留分侵害額請求をされた側が法人である場合など、様々な形態があります。適切に解決するためには、状況に応じてケースバイケースに判断することが必要です。
ご自身の状況に応じて具体的なアドバイスをお聞きしたいという方は、当事務所までお気軽にご相談ください。
当事務所には、弁護士経験20年以上の弁護士が在籍しており、これまでに数多くの遺留分侵害額請求のトラブルを取り扱った実績がございます。遺留分侵害額請求をされてお悩みの方は、どうぞ安心してご相談ください。
遺留分侵害額請求をされた場合の注意点
遺留分侵害額請求は、複雑な制度です。対応を誤ってしまうと、話し合いで解決することができなくなり、裁判所での調停や裁判が必要となります。
裁判所で争うとなると、訴訟費用がかかるうえに、解決するまでに長い時間がかかってしまいます。
早期解決するためにも、下記の点に注意して慎重に対応しましょう。
注意点1:適正な遺留分は渡さなければならない
遺留分は、相続人に対して最低限の遺産を保障する制度です。相続人は、遺留分が侵害されている場合に、最低限の遺産を取り戻す権利があります。
よって、遺留分侵害額請求をした人が、法律上の適正な遺産を渡すように請求しているのであれば、正当な権利行使といえますので、遺産を渡さなければいけません。
しかし、請求してきた人物が、遺留分が認められていない人である場合には、遺産を渡す必要はありません。遺留分は、全ての相続人に認められているわけではありません。「遺産を期待することが当然である」という近い親族にのみ、認められています。
具体的には、亡くなった方の妻や夫、子ども、父母や祖父母は、遺留分を主張することができます。しかし、亡くなった方の兄弟姉妹は、たとえ相続人であったとしても、遺留分を主張することはできません。
よって、亡くなった方の兄弟姉妹から遺留分を請求された場合は、応じる必要はありません。
また、請求してきた人物が、法律で認められた以上の遺産を過大請求している場合には、そのとおりに遺産を渡す必要はありません。
注意点2:遺留分の計算に間違いがないかきちんと確認する
遺留分は、相続人に対して最低限の遺産を保障する制度ですが、「遺留分として〇〇万円を取り戻すことができる」というように、具体的な金額が決まっているわけではありません。
法律で決まっているのは、あくまで抽象的な割合のみです。
例えば、相続人が妻1人である場合は、妻に認められている遺留分は「2分の1」です。遺産の総額が1,000万円の場合は、遺留分として500万円を主張することができます。遺産の総額が1億円であれば、遺留分として5,000万円を請求することができます。
このように、法的に適正な遺留分の金額は、遺産の総額によって異なります。
また、被相続人の借金などの債務を遺産から控除することができます。
よって、遺留分侵害額請求をされた場合、遺留分の計算に間違いがないかどうかを、きちんと確認する必要があります。請求者に言われるがままに、そのとおりの金額を渡してしまうと、後になって「その計算が間違っていた」ということが発覚するかもしれません。
遺留分の計算は、専門家でも難しい問題です。「請求された遺留分の金額が合っているのかどうか分からない」とご心配の方は、お気軽に当事務所までご連絡ください。
注意点3:請求者が特別受益を受けていれば遺留分を減らすことができる
相続人間で遺留分請求をしている場合は、「特別受益」について考慮する必要があります。請求者が特別受益を受けている場合は、請求者に渡す金額を減らすことができる可能性があります。
特別受益とは、「相続人の中に特別な利益を受けた人がいる場合に、その価額を相続財産とみなして、遺産分割を行うこと」です。つまり、特別受益を受けている人物は、遺産分割で受け取ることができる金額が少なくなります。
例えば、請求者が結婚する際に、お亡くなりになった方から支度金(したくきん)や持参金(じさんきん)を贈与された場合は、特別受益に当たります。
その他にも、マイホームを購入する際のお祝い金をもらった場合や、事業を行ううえで資金援助を受けた場合なども、特別受益に該当します。
相続人の一部が特別受益を受けている場合、相続人間の公平を保つために、その特別受益の金額を差し引いて遺産分割を行うことになります。
よって、請求者が特別受益を受けている場合は、遺留分として渡す金額を減らすことができます。
特別受益については、詳しくは「特別受益にあたる贈与と計算方法について」でご説明しておりますので、具体的な計算方法を知りたい方はそちらをご覧ください。
注意点4:時効消滅している遺留分侵害額請求には安易に応じない
遺留分侵害額請求には、期限があります。期限が過ぎた後に請求された場合は、法律的には応じる義務はありません。
期限を過ぎた後に請求された場合であっても、請求をしてきた人と個人的なつながりがあり、その人との関係を大事にしたいというケースでは、遺留分の支払いに応じる方もいらっしゃいます。
例えば、相続人同士で遺留分侵害額請求を行っている場合は、その後の遺産分割を円滑に進めるために、期限を過ぎた後の請求に応じるということがあります。
ただし、これらのケースでは、あくまで「任意に応じている」にすぎません。請求に従うことは、法的な義務ではありません。
遺留分侵害額請求の期限を過ぎている場合は、請求に応じるかどうか、ご自身で自由に選択をすることができます。
遺留分侵害額請求の期限
遺留分侵害額請求の期限には、下記の2種類があります。どちらかを過ぎている場合は、遺留分侵害額請求に応じる義務はありません。
(1)請求者が遺留分が侵害されていることを知った日から1年が過ぎた場合
(2)相続開始から10年が過ぎた場合
遺留分の期限を正確に計算するためには、法的視点が必要となります。「遺留分侵害額請求をされて困っているが、既に期限を過ぎているのかどうか分からない」という方は、当事務所までご相談ください。
既に期限を過ぎているかどうかによって、対応方法が大きく異なります。既に期限を過ぎている可能性がある場合は、お早めにご相談ください。
なお、遺留分侵害額請求の期限については、「侵害された遺留分を取り戻す!遺留分侵害額請求は弁護士に相談」でご説明しておりますので、詳しくはそちらをご覧ください。
遺留分侵害額請求をされた方は当事務所までご相談ください
遺留分侵害額請求をされた場合、慌てることなく慎重に対応することが必要です。
遺留分を請求された側としては、請求者が適切な主張をしているのかどうかを見極めたうえで、遺産を渡す必要があるのかどうかを慎重に判断することが重要です。
また、遺留分侵害額請求には期限があります。期限を過ぎた後に請求された場合は、応じる義務はありません。既に期限を過ぎているかどうかによって、対応方法が大きく異なりますので、遺留分侵害額請求をされた場合は、まず「期限を過ぎているかどうか」を検討する必要があります。
遺留分の期限の計算は、具体的事実を調査したうえで法的観点から検討しなければいけません。専門的な知識が必要となりますので、既に期限が過ぎている可能性がある方は、相続問題に精通した専門家にご相談されることをお勧めいたします。
遺留分侵害額請求は、法律的に複雑な制度ですが、真摯(しんし)に対応すれば、話し合いで解決をすることが可能です。対応を誤ってしまうと、話し合いで解決することができなくなり、裁判所での調停や裁判が必要となります。裁判所で争うとなると、訴訟費用がかかるうえに、解決するまでに長い時間がかかってしまいます。
早期にトラブルを解決するためにも、遺留分侵害額請求をされた場合は、できる限りお早めに専門家にご相談されることをお勧めいたします。
当事務所では日頃から相続の案件に力を入れておりますので、これまでに数多くの遺留分侵害額請求に関する案件を取り扱った実績がございます。遺留分侵害額請求をされてお悩みの方は、どうぞ安心して当事務所にご相談ください。
遺留分侵害額請求についてのご相談は、初回60分のみ無料で受け付けておりますので、ご予算を気にすることなくご相談ください。