遺産分割の目安となる「法定相続分」とは?
遺産をどのように配分するかは、相続人全員の話し合いによって決定します。話し合いを行う際には、「法定相続分(ほうていそうぞくぶん)」を目安として話し合いを行います。
それでは、「法定相続分」はどのように計算するのでしょうか?今回は、法定相続分の考え方について、具体例を交えて分かりやすく解説します。
なお、今回ご説明するルールは、あくまで一般的なルールです。法定相続分の仕組みは複雑ですので、法律の構造を細かく理解していなければ正確に理解することはできません。
ご自身の相続について正確に知りたいという方は、法律の専門家である弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
当事務所では、相続のご相談について初回60分は無料で受け付けております。法定相続分について具体的なアドバイスをお聞きしたいという方は、どうぞお気軽にご相談ください。ご相談のご予約はメールやお電話でも受け付けております。
法定相続分とは民法で定められた遺産分割の目安
まず、そもそも「法定相続分」とは一体どのようなものなのでしょうか?
法定相続分とは、「法律で定められた相続割合」のことです。日本の法律では、「相続人が何人かいる場合に、誰が何パーセントずつ相続財産を引き継ぐべきか」というルールを定めています。この割合のことを、「法定相続分」といいます。
法定相続分は、「誰が相続人なのか」によって異なります。つまり、相続人が配偶者(妻や夫)であるか、子どもであるか、兄弟や祖父母であるかによって、相続割合が異なります。
このように、法定相続分の考え方は、複雑な仕組みとなっています。ご自身で計算しようとすると間違ってしまうおそれがありますので、お悩みの方はお気軽に当事務所までご相談ください。
下記では、代表的な例を用いて、基本的なルールをご説明します。
法定相続分はどれぐらい認められているのか
それでは、具体的なケースごとに見ていきましょう。
【具体例1】子ども3人が相続するケース
相続人が子どものみである場合は、子どもの頭数で均等に配分します。長男であろうと末っ子であろうと、続柄(ぞくがら)は関係ありません。平等に分割します。
例えば、配偶者が亡くなっており、相続人として子どもが3人いる場合は、平等に3分割することになります。遺産の総額が1,200万円の場合は、400万円ずつ分割します。
胎児がいるケース
民法では、相続が発生した時点でまだ母親のお腹の中にいる子どもについても、相続をする権利があることを認めています。
相続が発生した時点で胎児であった場合でも、相続割合は変わりません。亡くなった方の相続人として子どもが2人、胎児が1人いる場合は、3人で遺産を3分の1ずつ相続します。
残念ながら死産となった場合には、胎児が相続をすることはありません。このため、お亡くなりになった方の子どもがまだ胎児である場合は、子どもが無事に誕生することを待ってから、遺産分割の手続きを行うことが一般的です。
非嫡出子がいるケース
非嫡出子(ひちゃくしゅつし)とは、法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれた子どものことです。内縁の夫婦の間に誕生した子どもや、愛人との間に生まれた子どもは、非嫡出子です。「婚外子(こんがいし)」や「隠し子」と呼ばれることもあります。
民法では、非嫡出子にも嫡出子と同じ法定相続分を認めています。よって、相続人として嫡出子が2人と非嫡出子が1人いる場合は、3人で遺産を3分の1ずつ配分します。
なお、非嫡出子に関する相続割合は、平成25年に最高裁判所が決定を出したことによって、取り扱いが大きく変わりました。このため、「いつ相続が発生したか」によって、非嫡出子の法定相続分は異なります。
非嫡出子の相続については、「前妻との子どもや非嫡出子の相続分はどうなるのか?」で詳しく説明しております。詳しく知りたい方は、そちらをご覧ください。
【具体例2】妻と子ども2人が相続するケース
相続人として配偶者(夫や妻)がいる場合は、配偶者(夫や妻)が2分の1の法定相続分を有します。子どもが何人であっても、配偶者(夫や妻)の法定相続分は変わりません。
相続人として妻と子ども2人がいるケースでは、まず妻が2分の1の法定相続分を有します。残りの2分の1を、子どもの頭数で均等に配分します。子どもが2人いる場合は、子どもが4分の1ずつ相続します。
子どもが何人であっても、妻の法定相続分は変わりません。もし子どもが3人の場合は、妻が2分の1、子どもが6分の1ずつ相続します。子どもが4人の場合は、妻が2分の1、子どもが8分の1ずつ相続します。
【具体例3】妻と実母が相続するケース
亡くなった方の父親や母親のことを、「直系尊属(ちょっけいそんぞく)」と呼びます。直系尊属が相続人となる場合は、どのように計算するのでしょうか。
配偶者(夫や妻)と直系尊属(父母)が相続人となる場合は、まず配偶者(夫や妻)が3分の2を相続し、残りの3分の1を直系尊属で均等に分けます。
例えば、亡くなった方の妻と実母が相続人となるケースでは、妻が3分の2、実母が3分の1の法定相続分を有します。
直系尊属が何人いたとしても、妻の法定相続分は変わりません。妻の法定相続分は、常に3分の1です。もし亡き夫の父母が2人ともご健在であり、相続人として妻、実父、実母の3人がいる場合は、妻が3分の2、実父母が6分の1ずつ相続することになります。
【具体例4】妻と実兄が相続するケース
亡くなった方の兄弟姉妹が相続人となる場合は、どのように計算するのでしょうか。
配偶者(夫や妻)と兄弟姉妹が相続人となる場合は、まず配偶者(夫や妻)が4分の3を相続し、残りの4分の1を兄弟姉妹で均等に分けます。
例えば、亡くなった方の妻と実兄1人が相続人となるケースでは、妻が4分の3、実兄が4分の1の法定相続分を有します。
兄弟姉妹が何人いたとしても、妻の法定相続分は4分の3です。もし亡き夫の兄弟2人が相続人となる場合は、妻が4分の3、兄弟2人が8分の1ずつの法定相続分を有します。
必ずしも法定相続分の通りに相続する必要はない
必ず法定相続分の通りに分けなければいけない、というわけではありません。
例えば、相続人の全員が「長男が家業を引き継ぐのだから、長男が全財産を相続すればよい」と考えているのであれば、長男が全ての遺産を引き継ぐことができます。
他にも、亡くなった方の遺言によって、法定相続分とは異なる割合が指定されることがあります。このような場合は、基本的には遺言に書かれている割合が優先されます。
また、寄与分(きよぶん)や特別受益(とくべつじゅえき)がある場合は、法定相続分とは異なる割合で遺産を分割します。寄与分や特別受益については別のページで詳しく説明しておりますので、詳しく知りたい方はそちらをご覧ください。
法定相続分について詳しく知りたい方はお気軽にご相談ください
法定相続分は、誰が相続人になるかによって計算方法が異なります。法律に精通していない方が計算すると、間違ってしまうおそれがあります。ご自身の相続について具体的な計算方法を知りたいという方は、当事務所までお気軽にご相談ください。
法定相続分の計算を間違ってしまうと、その後の遺産分割の内容も大きく変わってしまいます。法定相続分について不安な点がある場合は、お早めに弁護士にご相談することをお勧めいたします。
当事務所は、日頃から相続の案件に力を入れており、弁護士業務20年以上の実績のある弁護士が在籍しております。駅からのアクセスも便利な場所にありますので、相続についてお悩みの方はいつでもお気軽にご相談ください。