相続財産の対象となるのはどこまでか?
相続が始まったらまずは「相続財産の調査」が必要
身近な方がお亡くなりになった場合、相続人全員が集まって、「誰がどの財産を引き継ぐのか」について話し合います。この話し合いのことを、遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)といいます。
遺産分割協議では、「そもそもどのような財産が残されているのか」が分からなければ、話し合いを進めることができません。
このため、遺産分割を行うためには、まず前提として「相続財産としてどのようなものがあるか」を調査することが必要となります。
この「相続財産の調査」には、法的な知識が必要となります。このため、相続財産を調べていると、「これは遺産に含まれるのか」「どこまでが相続財産となるのか」など、様々な問題が生じます。
そこで今回は、「相続財産にはどのようなものが含まれるのか」について、具体例を交えて分かりやすく解説します。また、調査を効率的に進めるために、相続財産の調査を行ううえでの注意点も紹介します。
なお、下記はあくまで一般的なご説明です。下記で説明する以外にも、相続財産には非常に多くの種類があります。このため、相続財産の調査はご自身の状況に応じてケースバイケースに進める必要があります。
ご自身の状況に即して具体的なアドバイスをお聞きしたいという方は、当事務所までお気軽にご相談ください。
当事務所には、弁護士経験20年以上の実績のある弁護士が在籍しており、これまでに数多くの相続財産の調査を取り扱った実績がございます。相続財産の調査についてお悩みの方は、どうぞ安心してご相談ください。
相続財産にはプラスの財産もマイナスの財産もすべて含まれる
お亡くなりになった方から引き継ぐ財産のことを、「相続財産」といいます。「遺産」と呼ぶこともあります。
相続財産は、お亡くなりになった方の全ての権利義務を含みます。現金や預貯金などのプラスの財産だけでなく、住宅ローンや借金などのマイナスの財産も含みます。
プラスの財産の例
プラスの財産として代表的なものは、現金や預貯金、株式や国債などがあります。
土地やマンション、宅地や農地、店舗やテナントビルなどの不動産も、プラスの財産です。
不動産に関する権利
相続財産に不動産が含まれている場合は、不動産に関する権利も調べておきましょう。不動産に関する権利も、相続の対象となります。
たとえば、他人の土地の上に建っているマンションを相続した場合を考えてみましょう。
通常、マンションには借地権(しゃくちけん)が付いています。借地権とは、「他人の土地を自由に使う権利」のことです。借地権は、目に見えない権利ですが、プラスの財産として相続することができます。
借地権を相続するために、土地の持ち主から了承を得る必要はありません。土地の持ち主から立ち退きを迫られても、借地権を相続したことを理由として、そのままマンションを所有し続けることができます。
ただし、お亡くなりになった方が賃料を支払っていた場合には、賃料を支払う義務も相続します。よって、借地権を相続した場合には、賃料を支払わなければいけません。
その他にも、借家権や地上権などの不動産に関する権利は、全て相続の対象となります。
車や生活用品、宝石、骨董品など
お亡くなりになった方が所有していたものは、全て相続財産に含まれます。車や生活用品、家具や家電、宝石や骨董品(こっとうひん)など、全てが相続の対象となります。
金銭的に価値のないものであっても、相続財産に含まれます。
株式などの金融商品
有価証券や株式などの金融資産は、相続の対象となります。社債や国債、手形や小切手なども含まれます。
なお、亡くなった方が銀行口座、株式等の有価証券を所有していたかどうかは、金融機関に問い合わせて確認します。株券がある場合は、株券を確認すれば名義を調べることができます。
ただし、株券の発行年月日が古い場合は、直接金融機関に問い合わせをする必要があります。
損害賠償請求権
お亡くなりになった方が損害賠償請求権を有していた場合は、その権利そのものを相続することができます。
たとえば、お亡くなりになった方が交通事故で死亡した場合は、車の運転手にに対して、治療費や慰謝料等の損害を請求することができます。しかし、既に死亡していますので、本人が自ら請求することはできません。
このような場合は、お亡くなりになった方の妻や子どもが、相続人として損害を請求することになります。
マイナスの財産の例
相続財産には、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含まれます。マイナスの財産には、どのようなものがあるのでしょうか?
ローンや借入金などの借金
住宅ローンや教育ローン、カードローンやマイカーローンなど、借金は全て相続財産に含まれます。
事業を行うために銀行から借入をした債務や、友人や親戚からの借金なども、全て相続の対象となります。
お亡くなりになった方が友人や親戚から借金をしていた場合は、お金を貸していた人物との間でトラブルが生じやすいため、慎重に対応することが必要です。
友人や親戚から借金をしていた場合は、借金の日付や金額が曖昧(あいまい)になっているおそれがあります。銀行や信用金庫から借り入れをしていた場合は、借金の総額や利息の記録がきちんと残されていますので、このような心配はありません。
お亡くなりになった方が友人や親戚から借金をしていた場合は、通常のケースよりも財産調査を慎重に行わなければいけません。調査には時間がかかりますので、お早めに専門家にご相談されることをお勧めいたします。
保証債務
保証債務とは、お金を借りた本人が返済できない場合に、代わりに借金を肩代わりするという債務です。
お亡くなりになった方が他人の借金の保証人となっていた場合は、その保証債務も相続の対象となります。
このような保証債務については、特に時間をかけて調査を念入りに行う必要があります。
保証債務は、お亡くなりになった方ご自身の借金ではありません。本人が借金をしていたわけではないため、お亡くなりになった方ご自身が保証債務のことを忘れてしまい、遺言の中に記載し忘れてしまうおそれがあります。
よって、遺言の中に保証債務について書かれていなくても、保証債務があるかどうかはきちんと調査しなければいけません。
もっとも、借金をした本人が既に借金の全額を完済している場合は、保証人が借金を肩代わりする必要はなくなります。よって、借金をした本人や債権者に連絡を取り、既にどれぐらい返済が進んでいるのかについて正確に調査をする必要があります。
このように、保証債務については慎重に調査をすることが必要となりますので、調査には時間がかかります。遺産に保証債務が含まれている疑いがある場合は、お早めに専門家にご相談されることをお勧めいたします。
損害賠償債務
お亡くなりになった方が損害賠償債務を負っていた場合は、その責任は相続人に承継されます。
たとえば、酔っぱらい運転で電柱に激突して死亡した人物が、その事故で歩行者にケガを追わせた場合には、その歩行者の治療費や慰謝料等の損害を支払う義務があります。
本人は既に死亡していますので、相続人が治療費や慰謝料等の損害を支払う責任を引き継ぎます。
相続財産を調査するうえでの注意点
相続財産の調査には、時間がかかります。調査を効率的に進めるために、2つの注意点を頭に入れておきましょう。
注意点1:生命保険金は相続財産に含まれる場合とそうでない場合がある
当事務所にご相談にいらっしゃる方の中には、生命保険金についてお悩みの方がたくさんいらっしゃいます。
実は、生命保険金をどのように扱うべきかは、専門家でも判断が難しい問題です。
生命保険金は、「お亡くなりになった方がどのような契約をしていたか」によって、相続財産に含まれる場合とそうでない場合に分かれます。
生命保険金は、特に受取人が指定されている生命保険は、お亡くなりになった方が生前に所有していた財産ではなく、その方が死亡した後に、受取人に直接支払われる財産です。このため、多くの場合は、生命保険金は相続財産に含まれません。
ただし、相続財産に含まれない場合であっても、生命保険金が高額である場合は、「特別受益」に準じて持戻しの対象になる場合があります。
特別受益とは、「相続人の中に特別な利益を受けた人がいる場合に、その価額を相続財産とみなして、遺産分割を行うこと」です。
このように、お亡くなりになった方が生命保険を契約していた場合には、受取人や保険金の金額などを精査して、具体的な状況に応じてケースバイケースに判断することが必要となります。
また、多くの場合は相続財産に含まれないものの、契約内容によっては、例外的に相続財産に含まれることがあります。このため、お亡くなりになった方が生命保険を契約していた場合には、契約書を取り寄せて契約の内容をきちんと確認しなければいけません。
遺産分割において生命保険金をどのように扱うべきかは、一律に線引きができる問題ではありません。法的な専門知識が必要となりますので、お悩みの方は当事務所までご相談ください。
なお、特別受益については、「特別受益にあたる贈与と計算方法について」で詳しく説明しております。詳しく知りたい方は、そちらをご覧ください。
注意点2:相続税申告のためにもみなし相続財産を算定しておく必要がある
相続税は、相続財産に課せられる税金です。このため、相続税の金額は、相続財産の価値によって決まります。
しかし、相続財産ではない財産であっても、例外的に相続税の対象となる財産があります。
例えば、死亡退職金や共済金、定期金は、相続財産ではありません。しかし、これらの財産によって遺族の方が利益を受けることになるため、相続財産に類似した性質を持っています。このため、これらの財産にも相続税が課されます。
このように、相続財産ではないにも関わらず、相続税の対象となる財産のことを、「みなし相続財産」といいます。
みなし相続財産の調査を怠ってしまうと、相続税の金額を正確に算定することができず、予想を大幅に上回る相続税を課せられるおそれがあります。
このような相続税のトラブルを防ぐためにも、相続財産そのものを調査するだけでなく、みなし相続財産についてもきちんと確認しておきましょう。
相続財産の調査でお悩みの方は当事務所までご相談ください
遺産を分割するためには、まず前提として「相続財産としてどのようなものがあるか」を調査しなければいけません。
しかし、「相続財産の調査」には、法的な知識が必要となります。相続財産を調べていると、「これは遺産に含まれるのか」「どこまでが相続財産となるのか」など、様々な問題が生じます。
相続に精通していない方がご自身で調査を行うと、長い時間がかかってしまうおそれがあります。相続財産の調査が終わらなければ、いつまで経っても遺産分割の話し合いを始めることができません。
遺言がある場合は、遺言の中に相続財産の一覧が記載されていることがありますが、全ての相続財産が漏(も)れなく記載されているとは限りません。実務上では、相続財産の調査を進めるうちに、遺言に書かれていない財産が発覚する、ということは珍しくありません。
遺産分割を行った後になって、新たな財産が発覚した場合は、その財産について遺産分割協議をしなければいけません。一度は相続人全員が合意に達した場合であっても、遺産分割協議をやり直すとなると、相続人同士の意見が対立してしまうかもしれません。
このように、遺産分割を行った後になって新たな財産が発覚した場合には、相続トラブルが発生するリスクが高くなります。このような事態を防ぐためにも、相続が開始した場合には、まずきちんと相続財産の調査を行っておくことをお勧めいたします。
相続財産の調査をゆっくり行う時間がないという方は、弁護士にご依頼されることをお勧めいたします。当事務所にご依頼していただければ、不動産や株式などのあらゆる財産の調査を行ったうえで、みなし相続財産についてもきちんと確認いたします。
当事務所では、日頃から相続の案件に力を入れておりますので、これまでに数多くの相続財産の調査を取り扱った実績がございます。相続財産の調査についてお悩みの方は、どうぞ安心して当事務所にご相談ください。
相続財産の調査に関するご相談は、初回60分のみ無料で受け付けております。お悩みの方は、ご予算を気にすることなくお気軽にご相談ください。