特別受益にあたる贈与と計算方法について
遺産分割の話し合いで特にややこしいのが、相続人の一人が生前贈与を受けていた場合などに問題になる「特別受益(とくべつじゅえき)」です。特別受益についてトラブルが生じると、遺産分割の話し合いが長引く傾向があります。
遺産分割のトラブルの原因となりうる「特別受益」とは、一体どのようなものなのでしょうか?
今回は、「どのような贈与が特別受益に該当するか」という具体例と、「特別受益がある場合はどのように遺産分割を行えばよいか」という計算方法について、分かりやすく解説します。
なお、下記はあくまで一般的なご説明です。ご自身のケースに即して具体的なアドバイスをお聞きしたいという方は、当事務所までご連絡ください。
当事務所では、特別受益についてのご相談を初回60分のみ無料で受け付けております。お悩みの方は、ご予算を気にすることなくお気軽にお問い合わせください。
生前優遇された相続人は特別受益にあたる可能性がある
特別受益とは、一体どのような制度なのでしょうか?
特別受益とは、「相続人の中に特別な利益を受けた人がいる場合に、その価額を相続財産とみなして、遺産分割を行うこと」です。
分かりやすく考えるために、具体例を見てみましょう。
父親が、長女に対して、「今まで世話になったお礼として500万円をプレゼントする」と言って、長女の口座に500万円を振り込みました。父親は、次の日に亡くなりました。
父親が残した遺産の総額は、2,000万円です。相続人は、長女と次女です。
単純に考えると、「遺産の総額である2,000万円を、姉妹で半分ずつに分けて、1,000万円ずつ相続する」ということになります。
しかし、次女としては、「亡くなる日の前日に500万円をもらっているのだから、実質的には遺産をもらっているようなものだ」「前日にもらった500万円を考慮しないのは不公平だ」と感じるでしょう。
そこで、このような場合、次女は長女に対して、「特別受益の持戻し(もちもどし)」を主張することができます。
具体的には、「亡くなる前日にもらった500万円も相続財産とみなすべきだ」と主張することができます。
このように、「相続人の1人が特別な利益を受けている場合に、その利益を考慮して遺産分割を行う」という制度が、特別受益です。
つまり、特別受益は、「相続人間の公平を保護するための制度」です。
特別受益がある場合は相続財産とみなして遺産分割を行う
特別受益がある場合、どのように遺産分割を行うのでしょうか?
先ほどの姉妹のケースを考えてみましょう。
次女は長女に対して、「亡くなる前日にもらった500万円も、相続財産とみなすべきだ」と主張することができます。
このように、特別受益を加算した相続財産のことを、「みなし相続財産」といいます。
- 【実際の相続財産】2,000万円
- 【みなし相続財産】2,000万円(実際の相続財産)+500万円(贈与)=2,500万円
よって、みなし相続財産は、「2,500万円」となります。
次に、みなし相続財産を、法定相続分で分割します。姉妹2人の法定相続分は、2分の1ずつなので、2,500万円を半分ずつ分けます。
- 【長女の法定相続分】2,500万円×2分の1(法定相続分)=1,250万円
- 【次女の法定相続分】2,500万円×2分の1(法定相続分)=1,250万円
よって、それぞれが獲得するべき財産の総額は、1,250万円です。長女は、既にプレゼントとして500万円を受け取っていますので、500万円を差し引きます。
- 【長女が受け取る遺産】1,250万円-500万円(贈与)=750万円
- 【次女が受け取る遺産】1,250万円
以上の計算により、長女が遺産として受け取る金額は、750万円です。
長女は、遺産として750万円しか受け取ることができませんが、既に500万円のプレゼントをもらっていますので、父親から譲り受けた財産の総額は1,250万円です。
結果として、姉妹が受け取る財産の総額は平等になります。
特別受益となる贈与とは?
先ほどの姉妹のケースでは、プレゼントとして渡された500万円が特別受益に当たりました。それでは、他にはどのような贈与が特別受益にあたるのでしょうか?
具体例を見てみましょう。
マイホームを購入するために援助された資金
マイホームを購入する際に資金を援助してもらった場合は、特別受益に該当します。マンションそのものをプレゼントされた場合も、特別受益に当たります。
二世帯住宅を建てる際に、親が建築費用を全額支払った場合も、特別受益に該当します。
結婚をする際の高額なお祝い金
結婚する際に支度金(したくきん)や持参金(じさんきん)を渡してもらった場合は、特別受益に含まれます。ただし、その世帯の生活状況に照らして、「生活費の援助」というレベルの少額のものであれば、特別受益には該当しません。
結婚式場に支払う挙式費用は、特別受益には該当しません。例外的に、特に華美な挙式を行った場合など、挙式費用が高額となったケースについては、特別受益に該当することがあります。
つまり、結婚に関する金品は、その金額によって、特別受益に当たる場合と当たらない場合があります。一律に線引きをすることができないため、話し合いで解決することが難しく、遺産分割を長引く原因となることが少なくありません。
結婚に関する贈与は、特別受益に該当するかどうかの判断が難しい問題です。お悩みの方は、当事務所までご相談ください。
事業を行うための資金や物品
脱サラをして事務所を開業する際に、親から資金援助を受けた場合は、特別受益に該当します。店舗拡大の工事費用を払ってもらった場合や、リニューアルのための改築費用を支払ってもらった場合も、特別受益に当たります。
特別受益に含まれるものは、現金に限りません。物品を援助してもらった場合も、特別受益に含まれます。
例えば、土地や店舗を購入してもらった場合も、特別受益に該当します。
海外留学などの特別な教育のための学費
親は子どもの教育費を負担する責任があるため、小学校などの義務教育の費用は、特別受益に含まれません。
しかし、海外留学やホームステイなどの特別な教育の費用は、特別受益に該当する可能性があります。
海外の学校に限らず、日本国内で高額な費用をかけて専門学校に通った場合や、資格取得のために高額な通信講座を受講した場合も、特別受益に含まれる可能性があります。
特別受益を認めてもらうためには具体的な証拠が必要
特別受益を受けた本人としては、特別受益を認めてしまうと、遺産の取り分が減ることになります。このため、特別受益の存在そのものを否定する方が多く、特別受益を巡って争いとなるケースは珍しくありません。
このようなリスクを避けるためには、あらかじめ具体的な証拠をそろえておくことが重要です。詳細な証拠があれば、はっきりと特別受益の存在を指摘することができるため、相手が特別受益を争う可能性が低くなります。
特別受益の主張を認めてもらうためには、「明確な証拠」が必要です。具体的な証拠がそろっていなければ、特別受益の存在が否定されるリスクが高まります。特別受益について争いが生じると、遺産分割の話し合いは難航(なんこう)してしまいます。
どのような証拠をそろえればよいかは、具体的な状況によって異なります。特別受益の主張をご検討されている方は、遺産分割に精通した弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
特別受益のサポートは当事務所にお任せ下さい
特別受益は、相続人間の不公平を是正するための制度です。他の相続人が高額な贈与を受けている場合は、特別受益の主張をすることが可能です。遺産分割についてご不満を感じていらっしゃる方は、当事務所までご相談ください。
特別受益を主張するためには、「具体的な証拠」が必要となります。どのような証拠をそろえるべきかは、ケースバイケースです。個々の状況に応じて的確に判断しなければいけません。
当事務所では、日頃から相続の案件に力を入れており、これまでに数多くの特別受益に関するトラブルを取り扱った実績があります。当事務所にご相談していただければ、お客様の状況に応じて、どのような対策を取るべきかについて具体的にアドバイスをいたします。お悩みの方は、どうぞ安心してご相談ください。
なお、当事務所では、相続が発生する前のご相談も受け付けております。「自分が亡くなった場合に、特別受益について争ってほしくない」というご相談や、「子どもが特別受益で争わないように遺言を残しておきたい」というご相談も受け付けております。
当事務所には、弁護士業務20年以上の実績のある弁護士が在籍しております。特別受益についてお悩みの方は、いつでもお気軽にご相談ください。