遺言には相続分の指定以外の効力がある|遺言書を残した方がいい場合
「終活」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?
終活とは、自らの死に備えて、お墓の準備をしたり住まいの片付けをするなど、身の回りを整理することです。
終活を行ううえで重要となるのが、「遺言書の作成」です。遺言書は、必ず作成しなければいけないわけではありませんが、多くの人が終活の一貫として遺言を作成しています。そして、相続人関する紛争を防止するためにも遺言書を作成することをお勧めします。
それでは、遺言書を作成するとどのようなメリットがあるのでしょうか?
今回は、遺言を作成することの法的効果と、遺言を作成した方が良いケースについて、分かりやすく解説します。
なお、下記はあくまで一般的な説明です。遺言を作成するべきかどうかは、具体的なケースに応じて臨機応変に検討する必要があります。ご自身のケースに即して具体的なアドバイスをお聞きしたいという方は、当事務所までご連絡ください。
当事務所では、遺言に関するご相談を初回60分のみ無料で受け付けております。遺言についてお悩みの方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
遺言書のメリット
遺言書を作成すると、下記の5つのメリットがあります。
遺産分割の方法を指定できる
遺言の最大のメリットは、「遺産を誰にどれだけ渡すか」という具体的な方法を残すことができる点です。
日本の法律には、遺産分割の方法が定められていますが、ごく抽象的なルールしか記載されていません。子どもが2人いる場合には、「長男と次男で2分の1ずつ分ける」というルールになっていますが、「どの財産をどのように半分に分けるか」ということまでは決まっていません。
このため、遺言が残されていない場合は、「マンションはいらないから現金を全て相続したい」「株式を相続して会社を引き継ぎたい」など、各相続人がそれぞれの希望を主張して、話し合いが平行線となるおそれがあります。
遺言には、ご自身の希望を具体的に残すことができます。例えば、「会社は長男に引き継いでもらい、実家のマンションは次男に住んでもらいたい」というように、それぞれの財産を誰に渡すのかについて、詳細に指示をすることができます。
また、一人の相続人に法定相続分よりも多くの遺産を取得させることもできます。
相続についてだけでなく、ご自身の葬儀の方法を記載することもできます。実は、遺産分割においては、葬儀の費用についてトラブルが生じることが珍しくありません。
例えば、「自分が葬儀費用を支払ったので、支払った分だけ多めに遺産をもらいたい」というケースや、「長男が1人で香典を受け取っているので、その分だけ遺産を少なめにするべきだ」などのトラブルが生じることがあります。
このようなトラブルを避けるために、遺言の中に、「葬儀の費用はA銀行の預金から支払ってもらい、足りなければ香典でまかなうように」と記載するという方法があります。このような具体的な指示があれば、葬儀費用のトラブルを避けることができます。
葬儀や遺産分割は、身近な方がお亡くなりになった後に、慌ただしく行われます。このため、相続人が仲の良い場合でも、お互いに余裕を持って作業を進めることができず、トラブルとなってしまう可能性があります。
遺言があれば、相続人の方々に向けて、「どのように行動するべきか」を指示することができます。
つまり、遺言は、お亡くなりになった方ご自身の希望を伝えるという意味合いもありますが、相続人の方々に向けてアドバイスを示すという役割もあります。
法定相続人以外に遺贈できる
相続人ではない第三者に財産を残したい場合には、どうしたらよいのでしょうか?
例えば、病気の世話をしてくれた息子の妻、姪などにお礼を渡したい場合や、ボランティア団体に寄付をしたい場合は、どうしたらよいのでしょうか?
このような場合は、遺言を作成しておくことが有効です。
遺言によって、「遺産のうち100万円をボランティア団体に寄付する」と指定しておけば、まず相続人は100万円をボランティア団体に寄付をして、残りの財産を相続人間で分けることになります。
上記の遺言のように、遺言によって第三者に財産を渡すことを、「遺贈(いぞう)」といいます。
遺贈する相手は、個人に限らず、会社やNPOなどの組織でも構いません。
ただし、遺言によって遺贈をする場合は、注意が必要です。相続人にとっては、遺贈によって遺産の取り分が減ることになりますので、遺言の効力を争ったり、遺留分を主張する可能性が高くなります。
遺留分とは、相続人に最低限保障された取り分のことです。遺留分については、「侵害された遺留分を取り戻す!遺留分侵害額請求は弁護士にご相談を」で説明しておりますので、詳しくはそちらをご覧ください。
遺言によって遺贈をする場合は、各相続人の遺留分を計算して、遺留分に関するトラブルが生じないように配慮することが必要です。
遺留分の計算には専門的な知識が必要となりますので、遺言によって遺贈をすることをお考えの方は、あらかじめ弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
遺言執行者を指定できる
遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ/いごんしっこうしゃ)とは、「遺言に記載された内容を実現するために、相続の手続きを代行する人」のことです。
遺産分割には、膨大な手続きが必要となります。法務局や市役所、税務署などに出向いて、数多くの書類を集めなければいけません。
相続人がお忙しい場合は、相続の手続きをするだけでも長い時間がかかってしまいます。法律に精通していらっしゃらない方にとっては、大きな負担となってしまうかもしれません。
遺言によって遺言執行者を指定しておけば、遺言執行者が責任を持って手続きを請け負いますので、スムーズに相続の手続きを進めることができます。
遺言執行者には、どなたを指名しても構いません。相続人の1人を指名することもできますし、弁護士を指名する方もいらっしゃいます。当事務所でも、遺言執行者としての業務を受け付けております。
これまでにも、遺言の作成をご依頼されたクライアント様から、「ついでに遺言執行者もお願いしたい」とご依頼されることがありました。もちろん遺言の作成のみを承ることも可能ですが、遺言執行者として当事務所の弁護士を指定していただければ、お亡くなりになった後にもサポートを続けることができますので、確実に遺言の内容を実現することができます。
隠し子を認知することができる
何らかの理由で自分の子どもを認知していない場合、お亡くなりになる直前になって、「認知しておけば良かった」と気がかりになることがあります。
このような場合は、遺言によって子どもを認知することができます。
遺言によって認知された子どもとの間には、法的に正式な親子関係が認められます。つまり、その子どもは、あなたの相続人として遺産分割に参加する権利を有します。
ただし、遺言による認知は、慎重に行う必要があります。他にも相続人がいる場合は、その方々の取り分が大きく減ることになりますので、トラブルが生じるリスクが高くなります。
また、認知される子どもにとっても、その方の身分を大きく左右する事柄ですので、あらかじめ本人の意思を確認しておくなど、十分な配慮が必要です。
遺言による認知をお考えの方は、上記の準備が必要となりますので、あらかじめ相続問題に精通した弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
遺言書を作成したほうがいいケースとは?
遺言は、必ず作成しなければいけないわけではありません。それでは、遺言を作成した方が良いケースとは、どのような場合なのでしょうか?
下記のケースでは、遺産分割で争いが生じる可能性が高いため、遺言を作成しておくことをお勧めいたします。
- ・離婚や再婚の経験があり、相続人同士の折り合いが良くないケース
- ・不動産など、分割しにくい財産が遺産に含まれている場合
- ・相続人が多忙であるため、遺産分割に十分な時間を取ることができない場合
- ・事業を経営しており、会社の財産と個人の財産が混在している場合
- ・住宅ローンや借金など、マイナスの財産が遺産に含まれている場合
また、下記のようなご希望がある場合にも、遺言を作成しておくことをお勧めいたします。
- ・「実家は長男に住んでもらいたい」など、遺産の分け方に具体的な希望がある場合
- ・遺産の一部をボランティア団体に寄付したい場合
- ・生前にお世話になった方など、相続人ではない第三者に遺産を残したい場合
- ・葬儀のスタイルや費用について家族に指示をしたい場合
- ・隠し子を認知したい場合
- ・折り合いが良くない相続人がいるため、相続人から廃除したい場合
遺言の作成は弁護士にご相談を
遺言は、残された家族の財産を左右する重要な書類です。このため、日本の法律には、遺言が有効なものと認められるための様々な条件を定めています。
些細(ささい)な不備であっても、法律で定める条件をみたしていなければ、遺言は無効となってしまいます。無効となりうる遺言が残されていると、遺族が混乱してしまい、かえってトラブルの元となってしまいます。
このようなリスクを避けるためにも、遺言の作成をご検討されている方は、あらかじめ弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
当事務所では、日頃から相続の案件に力を入れており、これまでに数多くの遺言を作成した実績がございます。遺言執行者としての業務も受け付けておりますので、お亡くなりになった後のサポートを行うことも可能です。
弁護士経験20年以上の弁護士も在籍しておりますので、遺言の作成をご検討されている方は、どうぞ安心してご相談ください。