遺言書が見つかったら「検認」が必要
遺言書が見つかったら必ず検認をしなければならない
亡くなった方の自筆証書遺言が見つかったら、どうしたらいいのでしょうか?すぐに開封してもよいのでしょうか?
実は、自宅や病院で自筆証書遺言を発見した場合、ご遺族が無断で遺言を開封することはできません。遺言を発見したら、封筒を開封する前に、まず家庭裁判所で開封の手続きを行わなければいけません。
裁判所で手続きをする前に封印のある自筆証書遺言書を開封した場合は、5万円以下の過料の対象となります(民法1005条)。
自筆証書遺言を発見した場合や、自筆証書遺言を預かっている場合は、開封をする前に、必ず裁判所で手続きを行いましょう。
それでは、家庭裁判所でどのような手続きを行えばよいのでしょうか?今回は、家庭裁判所での手続きの流れを解説し、手続きを弁護士に依頼するメリットについても紹介します。
なお、下記はあくまで一般的なご説明です。ご自身の状況に即して具体的なアドバイスをお聞きしたいという方は、当事務所までお気軽にご相談ください。
当事務所には、弁護士経験20年以上の実績のある弁護士が在籍しており、これまでに遺言に関するトラブルを数多く取り扱った実績がございます。遺言の検認についてお悩みの方は、どうぞ安心してご相談ください。
検認では遺言書の形式や態様を調査・確認する
遺言を発見した場合は、封筒を開封する前に、まず家庭裁判所で手続きを行わなければいけません。この裁判所での手続きのことを、「検認(けんにん)」といいます。
家庭裁判所の検認では、遺言書の形式や状態を確認します。
家庭裁判所での検認手続きは、遺言が書き換えられることを防ぐために行われます。裁判所で遺言の原型を確認しておけば、後になって遺言が書き換えられたとしても、書き換えられた箇所がすぐに分かります。
検認手続きを行う前に遺言を開封することは、法律で禁止されていますので、注意しましょう。
検認手続きの流れ
それでは、検認の手続きはどのように進むのでしょうか?
具体的な流れを見てみましょう。
手順1:家庭裁判所に申立てをする
遺言書を発見したら、開封する前に、まずは家庭裁判所に「検認」を行うように申立てをします。
家庭裁判所に検認の申し込みをすることを、「検認の申立て」といいます。
家庭裁判所は全国に数多く存在しますが、どこの裁判所に申立てをしてもよいというわけではありません。原則としてお亡くなりになった方の最後の住所地に近い裁判所が管轄となります。
よって、亡くなった方が最後に住んでいた場所を管轄する家庭裁判所を探し出し、その裁判所に申立てを行います。
手順2:家庭裁判所から呼び出し状が届く
家庭裁判所は、申立ての書類を精査したうえで、検認を行う日時を決定します。
日時が決まると、家庭裁判所は相続人全員に対して通知を送ります。申立てをした本人だけでなく、必ず「相続人全員」に通知を送ります。
手順3:家庭裁判所で検認を実施する
裁判所が指定した期日に、検認が行われます。
検認に立ち会うことは、相続人の義務ではありません。出席するかどうかは、各相続人の判断に任されています。相続人全員がそろわなくても、検認手続きは行われます。検認に立ち会わなくても、罰則はありません。
検認の期日では、まず、申立人が自筆証書遺言書を提出します。出席した相続人の立ち会いのもとで、裁判所が遺言書を開封します。遺言書の日付や署名、書き直した部分など、遺言書の状態を細かく確認します。
確認が終了すると、遺言書はその場で申立人に返却されます。
手順4:家庭裁判所から検認が完了したことの通知書が届く
検認が行われると、検認に参加しなかった相続人に対して、家庭裁判所から通知が届きます。手紙の中には、検認が完了した旨が記載されています。これを「検認済通知書」といいます。
なお、この通知書は、あくまで「検認が終了した」ということをお知らせする手紙です。検認が完了したことを証明するためには、「検認済証明書」が必要となります。
「検認済証明書」とは、検認手続きが完了したことを公的に証明する書類です。検認済証明書には、「検認した年月日」や「検認を行った家庭裁判所の名前」などが記載されています。
検認済証明書を取り寄せるには、遺言1通につき150円の費用がかかります。
検認の必要書類と費用
家庭裁判所に検認を申し立てるためには、どのような準備が必要なのでしょうか?
申立ての費用
裁判所に検認を申し立てるためには、遺言1通につき800円の費用がかかります。その他にも、郵便切手などの実費を前納しなければいけません。
郵便切手の値段は、相続人の数によって異なります。相続人の数が多ければ多いほど高くなりますが、通常は数百円以内におさまります。
申立てに必要となる書類
検認の申立てには、多くの書類が必要となります。
必要となる書類は、相続の状況によって異なりますが、必ず必要となる書類は、下記の4つです。
- (1)遺言者の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
- (2)相続人全員の戸籍謄本
- (3)家事審判申立書
- (4)当事者目録
相続状況によって必要となる書類
その他にも、相続の状況によって様々な書類が必要となります。
代襲相続が問題となる場合
亡くなった方の子どもが既に死亡している場合など、代襲相続が問題となる場合には、代襲相続を示す戸籍が必要となります。
たとえば、亡くなった方の子どもが既に死亡している場合は、その子どもの出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本が必要です。
相続人が妻(夫)と父母(祖父母)である場合
直系尊属(父母や祖父母)が相続人となる場合は、父母や祖父母が相続人となることを示す戸籍が必要となります。
たとえば、亡くなった方の父母と祖父が既に死亡しているために、祖母が相続人となる場合は、父母と祖父が死亡していることが記載されている戸籍謄本が必要です。
相続人が妻(夫)のみの場合、妻(夫)と兄弟姉妹の場合
亡くなった方に子どもがいない場合は、兄弟姉妹が相続人となることがあります。このような場合は、下記の書類が必要となります。
- (1)亡くなった方の父母の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
- (2)亡くなった方の直系尊属(父母や祖父母)の死亡の記載のある戸籍謄本
相続人が妻(夫)と甥(姪)の場合
亡くなった方の兄弟姉妹が既に死亡している場合は、甥(おい)や姪(めい)が法定相続人となります。このような場合は、下記の戸籍が必要となります。
- (1)亡くなった方の父母の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
- (2)亡くなった方の直系尊属(父母や祖父母)の死亡の記載のある戸籍謄本
- (3)亡くなった方の兄弟姉妹の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
相続人が誰もいない場合
相続人が誰もいない場合は、相続人となりうる人物が既に全員死亡していることを示す戸籍が必要となります。
- (1)亡くなった方の父母の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
- (2)亡くなった方の直系尊属(父母や祖父母)の死亡の記載のある戸籍謄本
- (3)亡くなった方の兄弟姉妹の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
- (4)甥や姪が既に死亡している場合は、その甥や姪の死亡の記載のある戸籍謄本
検認を弁護士に依頼するメリットとは?
検認手続きは、弁護士に依頼することが義務とはされていません。ご自身で申立てを行うことも可能です。
しかし、当事務所には、検認手続きについてご相談される方が数多くいらっしゃいます。弁護士に検認手続きを依頼すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
メリット1:申立てに必要な書類を弁護士が取り寄せてくれる
先ほど説明したとおり、検認の申立てには多くの書類が必要となります。
提出しなければいけない戸籍の範囲は、相続の状況によって異なります。よって、「これだけ集めれば大丈夫」というマニュアルはありません。相続関係図を正しく把握したうえで、状況に応じて必要となる戸籍を全てそろえなければいけません。
場合によっては、戸籍謄本(こせきとうほん)だけでなく、戸籍の附票(ふひょう)や除票(じょひょう)を取り寄せなければいけないこともあります。転籍前の戸籍が必要となる場合もあります。
このように、申立てに必要な戸籍を取り寄せるだけでも、かなりの時間と労力を要します。
弁護士にご依頼された場合は、弁護士が代理人となって、相続に必要な資料を全てお取り寄せいたします。
戸籍の記録は、ご本人のものだけでなく、お亡くなりになった方のものや、ご親戚の方のものが必要となります。ご親戚の方々のプライバシーに関わる資料であるため、簡単に取り寄せることはできません。会社の部下や友人に頼んで取り寄せることはできません。
しかし弁護士であれば、このような資料を全て取り寄せることができます。弁護士には、法律によって広範な代理権が認められているため、検認の申立てに関するあらゆる資料を取り寄せることができます。
メリット2:申立書や相続関係図を作成してくれる
検認を申し立てる際には、当事者目録を作成して提出しなければいけません。当事者目録とは、相続人や相続関係を記載した書類です。
当事者目録を作成するには、相続関係を正しく理解していなければいけません。必要な戸籍を全て取り寄せたうえで、戸籍の記録と照らし合わせて、親族関係を法的に正確に把握することが必要です。
弁護士は法律の専門家ですので、法的に正しい視点を持って、誤りのない相続関係図を作成いたします。弁護士に依頼すれば、戸籍の取り寄せと相続関係図の作成まで全て代行いたしますので、ご自身が戸籍を読み解く必要はありません。
メリット3:検認後の相続トラブルに備えることができる
家庭裁判所の検認手続きは、遺言が有効であるか無効であるかを決定する手続きではありません。単に、「遺言書の現状」を確認するための手続きです。
このため、無事に検認手続きが完了したとしても、その後に遺言書が無効となる可能性が残されています。
遺言が無効である疑いがある場合には、さらに別の手続きを行わなければいけません。具体的には、家庭裁判所で調停を行うか、地方裁判所で遺言無効確認の訴えを行うことが必要です。
遺言の内容によっては、相続人と遺産分割協議を行う必要が生じます。
このように、検認手続きが終了した後になっても、遺言をめぐってトラブルが生じるおそれがあります。検認手続きは、相続の手続きを開始するための入り口にすぎません。
もし検認手続きを当事務所にご依頼していただければ、その後にトラブルが生じた場合でも、当事務所の弁護士が迅速に対応することができます。
検認手続きをご依頼された方については、弁護士が相続関係図や当事者を把握していますので、その後のトラブルについても素早く対応することが可能です。
検認でお悩みの方は当事務所までご相談ください
遺言を発見した場合、ご遺族が無断で遺言を開封することはできません。遺言を開封する前に、まず家庭裁判所で検認手続きを行わなければいけません。
検認の申立てには、多くの書類が必要となります。必要な書類は、相続状況によって異なりますので、法的な視点を持ってケースバイケースに判断しなければいけません。
弁護士に依頼すれば、戸籍の取り寄せと相続関係図の作成まで全てサポートいたしますので、ご自身が戸籍を読み解く必要は一切ございません。
また、検認手続きが終了した後にトラブルが生じた場合でも、検認手続きを弁護士に依頼していれば、その後のトラブルについても弁護士が素早く対応することができます。
当事務所は日頃から相続の案件に力を入れており、これまでに遺言に関するご相談を数多く取り扱った実績がございます。遺言の検認についてお悩みの方は、どうぞ安心して当事務所にご相談ください。
当事務所では、遺言に関するお悩みについて初回60分のみ無料でご相談を受け付けております。遺言でお悩みの方は、ご予算を気にすることなくお気軽にお問い合わせください。